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境界知能・発達障害グレーゾーンの子どもの就職 データで見る現実と我が家の選択

境界知能・発達障害グレーゾーン子どもの就職
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境界知能や発達障害の子供の就職活動
境界知能やグレーゾーンの子供は就職できるのでしょうか?

<はじめに>

境界知能であったり発達障害グレーゾーンのお子さんの将来、気になりますよね。特に高校卒業後の進路についてはかなり悩ましいのではないでしょうか。

わが家の三男も境界知能で発達障害グレーゾーンです。現在高等専修学校の3年生。まさに卒業後の進路を決める時期です。

しかし、その特性ゆえなのか、なかなか思うようにはならず、高3秋の今になってもまだ宙ぶらりんです。(ちなみに進学ではなく就職で動いています。)

今回はそんな三男の就職活動について、これまでの経緯や今後の見通しなどをお話していこうと思います。

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目次

境界知能・発達障害グレーゾーンとは?

境界知能・発達障害グレーゾーンとは
境界知能などの知能指数とは?

境界知能も発達障害も耳にする機会が増えたと思いますが、具体的にはどのような状態のことをいうのでしょうか?ここではごく簡単にご説明しますね。

まず境界知能。

こちらは比較的明解な線引きができ、IQの数値で分けられます。境界知能の人のIQは70~84。平均知能の人はIQ85~115。軽度知的障害の人はIQ69以下となります。この境界域に入る人は人口の約14%程度と言われています。クラスに3~4人いる感じですね。

おおむね生活は送れますが、学校の勉強や仕事では困難な場面が多くなりがちです。

いっぽう発達障害グレーゾーン。

発達障害はASDやADHDなどが代表的です。こちらは生まれつき脳の機能に偏りがあり、コミュニケーションや社会性などに困難を抱える状態のことです。

よく「障害ではなく個性」と言われるのもこちらに当たりますね。人によって持っている特徴は様々です。

そのグレーゾーンというのですから、さらに微妙なわけです。いろんな傾向を持ち合わせてはいるけれど、さほど強くはない。それでも困難さは感じている、そんな状態です。

境界知能と発達障害のどちらか一方を持っている人もいれば、両方を持っている人もいます。わが家の三男は両方を持ち合わせています。

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境界知能・発達障害グレーゾーンゆえの誤解や困難さ

発達障害・境界知能グレーゾーンゆえの誤解や困難
さまざまな困難や誤解ってありますよね…。

境界知能や発達障害グレーゾーンの人は、わりと普通に生活できるので、定型発達の人と同じようにいろいろなことができると思われがちです。

学校の勉強、運動、仕事など、周りの人と同じレベルを求められ、上手くできずに非難されたり、自己嫌悪に陥ることもあります。また、ものすごく頑張れば何とかできたりもするので、「頑張ればできるじゃん。やる気の問題だね。」と責められたりもします。

その「頑張り」は、一般の人にとってはマラソンを全速力で走るくらいの頑張りが必要なことも多いです。それって無理なことですよね。100mくらいなら全速力で走れても、10㎞になれば絶対に無理なわけです。

境界知能であればもともとの能力が低いので、勉強などではどうしてもついていけなくなっていきます。「勉強が足りない!もっと頑張れ!」と言われても、能力的な限界があります。

コミュニケーションの部分でも、「変わった人。」というレッテルを貼られてしまうこともあるでしょう。「自分はこういう特性があるので理解してください。」なんて宣言する人もそうはいません。いたとしても、周りの人がそれを受け入れるのはなかなか難しいことかもしれません。

このように、定型発達の人とあまり違いがないために、能力以上のことを求められ、それができずに責められたり、自己嫌悪に陥ったりして、生きづらさを感じる人が多いのが現状です。

そして忘れてならないのが、境界知能も発達障害も、努力や治療で改善するものではないということです。普通の人が、何時間も頑張って勉強すればいい点数が取れる、というのとはわけが違います。いくら努力をしても、IQの数値は上がりません。

悲しいと感じるかもしれませんが、それを踏まえて当事者の立場に立ってみれば、分かってもらえて救われる、できなくて責められることがなく、自分らしくいられる、といった良い面もたくさんあります。

高校卒業後の進路

高校卒業後の進路と言えば、大学や短大、専門学校などへの進学か就職かのどちらかになりますね。

今回は、「境界知能・発達障害グレーゾーンのお子さんの就職」という点でお話していきます。

選択肢は一般就労、障害者枠での就労、福祉サービスを利用した就労、就労のための準備をする場、の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

◎ 一般就労

高校生の一般就労
私の住む地域の場合

わたしの住む地域では、高校生の就職活動は3年生の夏から始まります。6月になるとハローワークから高校生対象の求人票が学校経由で出てきます。たくさんある企業の中から自分でいくつか入りたいと感じる企業を選び、夏休みを利用して見学や体験に行きます。その中から1社だけに絞って9月以降の採用試験に臨むことになります。1社しか採用試験は受けられません。

高校生の就職活動はあくまでも学校を通してのものになります。直接ハローワークに行っても情報はもらえません。(1月以降は異なります。)見学や体験も、履歴書を送るのも学校経由です。

結果は10月には大体出ます。もしも不採用になってしまった場合は、学校の先生と相談して、二次募集が出ている企業を探してもらうことになります。どんな企業の募集が残っているのか、いまいちよく分からないので、粘って学校の先生からいろんな情報を引き出しましょう。

高校生が学校を通しての活動になるのは、生徒を守り、学業に支障がないようにという配慮があるためです。そして、よっぽどのことがなければみんなどこかに就職できます。(三男の学校はなぜか自衛隊推しでした。ほとんどの生徒が採用されていましたね。)

一般就労へ向けての採用試験は、当然のことながらたくさんの高校生との戦いになります。筆記試験も面接も、「この子はきちんと仕事ができるだろうか。」というシビアな目で審査されます。

もともとの能力が低い境界知能の子や、コミュニケーションに苦手意識がある発達障害の子にとっては、厳しい状況になることがありますね。事実、わが家の三男はみごとに不採用となりました・・・。

ただ、職種を選ばなければ、例えば運送業などはわりと採用されやすそうです。三男は免許は無理、フォークリフトも無理、などなどで遠慮しましたが・・・。

一般就労できれば、お給料はきちんともらえますし、社会保険なども整っている企業がほとんどです。独り立ちするのに十分な状態になれます。しかし、当然仕事はほかの人と同等のクオリティーが求められます。配慮なんてありません。なので、少しの覚悟が必要になってきますね。

◎ 障害者枠での就労

障害者枠での就労は?
発達障害の方でも、一般就労している方はたくさんいます。

障害者枠での就労と一般就労との違いは、障害者手帳を所有していることを公開しているか、していないか、ということになります。

企業には従業員数に対して一定の割合で障害者のある人を雇用する義務があるため、障害者枠での求人も出されます。

障害の特性に合わせた配慮がある環境で仕事ができるので、安心感がありますね。一方でその求人数は比較的少ないので、選択肢は多いとは言えないかもしれません。

高校生が障害者枠での雇用を望む場合、やはりまずは学校を通すことになります。そこからハローワークの担当部署へつないでくれます。

障害者枠での雇用ではなく、一般枠で就労している人もたくさんいます。それぞれの特性や能力に合わせて、無理しすぎない選択をしましょう。

◎ 福祉サービスを利用した就労

福祉サービスを利用した就労とは

こちらは福祉サービスを利用した就労です。

就労継続支援A型と就労継続支援B型があります。

・就労継続支援A型

障害や病気などで一般企業での就労が難しい人が、A型事業所と雇用契約を結んで、最低賃金以上の収入を得ながら働ける、福祉サービスです。継続的に働けることが条件です(原則18歳以上65歳未満)。

・就労継続支援B型

企業での就労が難しい障害のある人が、就労の機会を通して能力の向上を目指す福祉サービスです。こちらは雇用契約がないため、収入は工賃という形で数千円が支払われることが多いです。こちらはこれまでもあったいわゆる作業所と言えますね。

A型B型

就労継続支援A型とB型の平均賃金・平均工賃は以下のようになっています。

  • 就労継続支援A型の平均賃金:令和4年度83,551円 → 令和5年度86,752円
  • 就労継続支援B型の平均工賃:令和4年度17,031円 → 令和5年度23,053円
  • 両方とも年々上昇傾向

一人で生活するのに十分な収入とは言えないので、年金を受けながら就労継続支援施設で働く人が多いです。

ただ、どちらもその人の特性に配慮のある環境で働くことができます。A型であれば最低賃金が保証されているため、ある程度の収入はのぞめます。働く意欲のある人はやりがいを感じることができるでしょう。しかし、B型はほぼ収入がないということを頭に入れておかなければなりません。それでも、勤務時間が短めに設定されていたり、A型より仕事の内容も易しいものが多いため、ゆっくり自分の能力を伸ばしたい、という人には向いています。

また、福祉サービスなので、利用するには市役所での手続きが必要です。必ずしも手帳が必要なわけではありませんが、手帳がない場合は医師の診断書が必要になります。

市役所に就労継続支援サービスを利用したい、と申請に行くと、サービスを実施している事業所を紹介してくれて、手続き方法なども説明してくれます。市役所を通す前にも事業所の見学は行けます。そこで手続きの仕方を教えてくれることも多いです。

福祉サービスということで、必ず相談員さんに支援計画を立ててもらわなければなりません。いろいろやることや役所や事業所に出向くことが多く、結構面倒ですが、ここはしっかりと手続きをしましょう。市役所の方も事業所の方もきちんと教えてくれるので、あまり心配はありませんよ。

◎ 就労のための準備をする場

就労するための準備をする場

高校を卒業していきなり働くのは不安だ、という人には、働くための準備をするようなところもあります。福祉サービスの就労移行支援サービスがそうです。

こちらは18歳以上65歳未満で、一般企業で働きたいと希望している人が対象です。手帳がない場合でも、医師の診断書があれば利用することができます。

ただしこちらは利用期間が決まっていて、最長で2年間になります。(引き続き、就職定着支援があるところもあります)2年の間に就職に必要な心構えやスキルを身につけ、自信をもって就職できるようなサポートを受けられます。

就職活動にも協力してもらえ、その人に合った仕事を紹介してくれたり、面接の練習、履歴書の書き方、通勤練習など、手厚くフォローしてもらえるのもいいところですね。

こちらは訓練ですので、賃金や工賃は基本的にありません。(実習で外部企業に出た場合、工賃が支給されることもあります。)

2年のうちに働くための自信を身に着け、自分に合った職場で働けることが目標です。

厚生労働省によると、就労移行支援施設からの就職率(一般就労への移行率)は50%後半で推移しています。2022年度では57.2%となっています。また。就職から1年後の定着率は平均で82.3%と高い水準にあります。障害種別で見ると、発達障害71.5%、身体障害68.0%、知的障害68.0%、精神障害49.3%となっています。就労移行支援では就職後6か月間は職場定着支援が受けられるので、高い定着率につながっています。

また、数は少ないですが、障害者職業能力開発校というものもあります。こちらは就職を希望する障害者が専門的な知識や技術が学べる施設です。

パソコン関係や建築関係、調理関係など、さまざまなコースがあり、訓練期間も数ヶ月で終了するものから1年かかるものもあります。

ここまで、高校卒業後の進路(就職を目指す)のいろいろなパターンをご紹介してきました。どれがいいとかいうことではなく、お子さんの特性に合った、無理しすぎずに続けられるような進路を検討しましょう。

「お金が稼ぎたいから、絶対一般就労!」と決めつけず、ずっと先の将来までを視野に入れて、より良い選択ができるといいですね。

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わが家の三男の場合

わが家の三男の進路のようす
わが家の三男は「就職」します

わが家の三男は境界知能で発達障害グレーゾーンです。小学校では3~5年生を支援級で過ごし、中学校は普通級(勉強は辛かった・・・)、高校は高等専修学校へ進みました。

高校を選ぶ時も、特別支援学校の方がいいのではないかと思い、その道を模索していました。しかし、当時は手帳もなく、特別支援学校は人気があるので希望者も多く、入学は無理だろうとあきらめた経緯があります。

三男が進んだ高等支援学校は、不登校の生徒さんも受け入れる、とうたっている学校でした。支援級出身の生徒さんもいるということで、ここなら何とかなるかと入学した学校です。他の高校と比べれば勉強のレベルもそんなに高くないのですが、それでも三男には大変でした。情報系の学校なので、パソコンの授業も多く、そこでも苦労していましたね。

生徒さんの半分は専門学校などへの進学、半分は就職、という進路を選んでいます。進学の生徒さんはほとんどが姉妹校への進学なので、早々に入学先も決まり、就職希望の生徒さんも10月頃には就職先が決まっています。

ではわが家の三男はというと・・・。

勉強はもうしたくない
わが家の三男のは「勉強が嫌い」です。

本人曰く、「勉強はもう絶対したくない」し、仮に行ける学校があったとしても三男にはあまり意味がないと思ったので、進学ではなく就職を希望しています。しかし、師走の声が聞こえるようになっても、まだ就職先は決まっていません。

何がしたいとか、どういう職種がいいとか、まったくありません。「のんびりがいい」とは言いますが、自分の希望は三男本人も分かっていないと思われます。

それでも、夏にはいくつかの企業さんの見学や体験に参加しました。そしてその中から1社を選び、採用試験を受けたのですが、残念ながら不採用という結果になりました。

その後、学校からもまだ募集のある企業を紹介されましたが、本人の能力を考えると、なかなか厳しい所でした。

一方、夏の企業体験と並行してやっていたのが、就労移行支援サービス事業所の見学や体験です。パソコンスキル系の事業所が多い中、特別支援学校の卒業生が多く作業中心という事業所に絞り、体験をさせていただきました。そちらは受け入れていただけそう。

しかし、そこは三男には比較的易しい作業で、「本当にここでいいのかなあ。」と少しひっかかってもいました。ダンナに相談していたところ、特例子会社がやっている事業所はどうかなという話になり、さっそくアポを取って見学に行ってきました。

そこは製造業の特例子会社と一緒になって運営している事業所です。就労継続支援A型とB型、就労移行支援サービスがあります。ただ、メインはA型とB型。1週間の実習があり、初日の判定作業でA型かB型かが決められます。こちらの希望ではなく、事業所の判断で決まります。

こちらへ見学に行っていくつかの疑問がわきました。

製造業の特例子会社と一緒に運営している事業所
こちらは大手企業が関係している就労支援事業所

まず一つ目。その事業所へ入ることはできるのか。二つ目。仮にB型になった場合、収入はとても低くなります。そうなると、一人で生活していくことが難しくなります。年金や社会保険の問題も出てきます。三つ目。こちらの事業所は採用試験が1月にあり、入れなかった場合、行くところがなくなってしまう。(夏に行った事業所からは、12月中に確定の返事が欲しいと言われています。)

一つ目について。

事業所側としては返事のしょうがない、というところ。噂では結構落とされるという話も聞きます。確実に入れるということはないですね。

二つ目について。

これはダンナと話し合いました。わたしは「収入がなくて年金も健康保険もないのは将来困る。」と思っていたのですが、ダンナは「例えば一般企業が大変で途中でやめてしまうこともある。それを考えれば、そこでゆっくり続けて、もしかしたらA型や社員にもなれる可能性もある。おれは全然いいと思う。」と前向きに考えてくれていました。20歳になれば、多少の年金がもらえるかもしれません。(未確定です。)

三つ目について。もうこれは祈るしかない。今はこちらの事業所の採用試験を受けようと思っているので、先の事業所にはお願いしないということになります。本当に行くところがなかったらどうするんでしょうね・・・。

12月初めに1週間の実習に行きます。そうすればA型かB型かが分かりますし、最終日の面談で実際のところ入れそうなのかどうなのか、ということももう一度聞くことができるかなと思っています。

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境界知能・発達障害グレーゾーンの子どもの就職 まとめ 

このように、境界知能や発達障害グレーゾーンのお子さんの高校卒業後の就職活動は、なかなか苦労するかもしれません。

大切なのは、周りに流されて焦りすぎず、その子の能力を適切に判断し、長い目で将来を見通して考えることだと思います。「早くひとり立ちしてほしいから、とにかく一般企業で就職!」と早計に決めてしまわず、あらゆるパターンを検討して無理しすぎずに働き続けられる場所が見つかるのが一番なのかなと思うのです。

これはもちろん各ご家庭の事情や考え方があります。なので、これがベスト!という回答はないのかもしれません。

それでも、お子さんの生き方や特性を否定せず、より生きやすい道に進めたらいい、と考えているのは、皆さん同じではないでしょうか。

「だとしたら、わたしは何をしたらいいんだろう?」と疑問や不安を持たれている保護者の方も多いですよね。特別支援学校の状況は分からないのですが、普通の高校、高等専修学校などへお子さんが通っている場合、学校は早く就職先を決めてほしくてこちらを追い込んできます(言いすぎかな、でもそういう感じです)。その圧の負けずに、お子さんが長く続けられる、将来までも見越した選択をしましょう。

先生からは「自分のことだから自分で考えて決めろ!」とお子さんが言われるかもしれません(うちは言われました)。でも、それができれば発達障害と診断されたり、手帳をもらったりしないわけです。お子さんの進路について、親がいろいろ調べて動き、助言したり意見を言うのは過保護ではありません。学校の先生はお子さんの将来まで責任を持ってはくれません。

相談できる所はたくさんあります。市役所、ハローワーク、公的な相談施設など、たとえそこが担当ではなくても相談先へつなげてくれます。

高校生の就職活動は学校が主体ですが、学校だけの意見ではなく、たくさんの意見や可能性をお子さんと保護者の方が一緒に探していく必要がありますね。

わが家の三男の顛末はまたの機会にご報告させていただきますね。

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出典:文部科学省公式サイトより
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