【考える子ども】子どもの「考えられる力」が将来を決める

- 塾の先生だからこそ知っている!「自分で考えられる子」の本当の凄さ
- 彼らはなぜ「わからない」と言わないのか?
- 学校や家庭では見えにくい「自発的な問題解決能力」
「自分で考えられることのできる子がなぜ伸びるのか?」この問いへの答えは「誰かに何かを教えてもらわなくても、自分の力だけで新しい問題を解き、新しい困難にも立ち向かえるからです。
そこに他の誰かの指導が必要ないのです。誰かの助けを待たずとも、自分でどんどん先の課題へとチャレンジできるからです。
この力は、学校の勉強や受験勉強だけにとどまらず、社会に出てからさらに必要とされる力です。仕事の面でも、この問題はこういう解決方法もあるのではないか、このやり方もやってみよう、という前向きな取り組みができるようになります。
この記事では、そうした「自分で考えられる子」の特徴や、そういったお子さんをさらに伸ばしていけるような、親御さんの心構えなどをお話していこうと思います。
すでにその才能の芽を持っているお子さんに対し、親がどのように接すれば、その才能を最大化し、将来の大きな成功へとつなげられるのかを、塾の指導者の視点から具体的かつわかりやすくお話しします。そして、できる子どもの持つ「自分で考えれることの凄さ」を、親が改めて気づき、彼らの成長を加速させるためのヒントをお伝えしていきますね。
塾の先生だからこそ知っている!「自分で考えられる子」の本当の凄さ

塾には、様々なタイプのお子さんが来ます。新しい問題になると、自分で考えることもなく「先生、わからない!」という子。自分のミスに気づけずに「どこが違うのかさっぱりわからない」という子。言われるがままに解いていって、解き方が身につかず何度も同じミスをしてしまう子。
こうしたお子さんでも、根気強く繰り返して学習を続けることができれば、必ず進歩します。それでも、自分で考えることができる子と比べると、その進みの速さはどうしてもゆっくりになります。
ならば「自分で考えて行動できる子」は放っておけばいいのかというと、そういうことではありません。「自分で考えられる子」にはある共通点があります。それは、学習で困難に直面したときでも、「わからない」という言葉を安易に使わないということです。
彼らはなぜ「わからない」と言わないのか?

「わからない」と言わないのは、プライドが高いからではありません。彼らは問題に直面したとき、頭の中で瞬時にいくつかのステップを踏んでいるからです。
- 問題の定義
「これはどういう問題なのか?」 - 知識の検索
「これまでに習ったどのパターンが使えるか?」 - 仮説の構築
「この方法で試してみよう」
彼らは、答えを求めるための、解決策の選択肢を探しています。そして、一つの選択肢で失敗しても、すぐに次の選択肢を試す「レジリエンス(精神的回復力)」も同時に持ち合わせているのです。この姿勢こそが「自分で考えられることの凄さ」であり、「自分で考えられる子こそ、わからないと言わない」理由です。
学校や家庭では見えにくい「自発的な問題解決能力」

彼らの自発的な問題解決能力は、実は勉強以外にも現れています。
友達とのトラブル解決、自分の遊びのルール作り、習い事の道具の準備など、日常の小さな行動の裏側で、彼らは常に最高の選択肢を考え、実行しています。
この能力こそが、お子さんが将来、予測不可能な社会を生き抜くための確かな武器となります。
成績のつく学校の学習ではこうした力は見逃されがち(後回しにされがち)ですが、おそらくは多くの親御さんが身につけた欲しいと考えている力のはずですね。
参考文献
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授の研究では、結果ではなくプロセスを褒めることで、子どもは挑戦を恐れなくなることが示されています。Dweck, C. S., & Yeager, D. S. (2019). Mindsets: A View From Two Eras. Perspectives on Psychological Science
ドウェック, C. S., & イェーガー, D. S. (2019). マインドセット:二つの時代からの視点. 心理科学の展望
考える子どもへ親のNG行動
- 良かれと思って「口出し」していませんか?
- 親の不安が才能の芽を摘んでしまうメカニズム
- つい口出ししたくなる衝動を抑える3つのコツ
- 「あなたはできる!」を自覚させる親の魔法の言葉と行動
良かれと思って「口出し」していませんか?

私たち親は、子どもの成長を願うあまり、つい先回りして手助けしたり、口出しをしてしまったりすることがありますよね。周りから「よくできる子だね」と言われるお子さんを持つ親御さんであっても、「このまま伸ばしてあげたい」という気持ちと、「本当にこの方法で、将来自分で生きていけるのだろうか」という不安が混在しているのではないでしょうか。
このジレンマこそが、お子さんの持つ**「自分で考え、自分で判断し、行動する力」**という、最も重要な才能を伸ばす上での最大の壁になることがあります。
「みんなにできる子と言われるが、つい口出ししてしまう」「ほんとにうちの子は将来、自分で生きていける子なのか?」――この二つの不安を軽減するためにできる親の行動とはどのようなものでしょうか。そのヒントをお話していきますね。
わたしは、中学生以下の子どもたちを指導する塾の指導者をしています。数多くの子どもたちを見てきた経験から、断言できます。
「自分で考えることができる子は、必ず伸びる」
お子さんが「できる子」であればあるほど、親御さんは「もっと高みを目指してほしい」と考え、次の行動を促すための口出しが増えることもあります。しかし、これが最も避けたいNG行動です。
親の不安が才能の芽を摘んでしまうメカニズム

親は自分の経験上「こうした方が恐らくはいい」という考えで子どもに助言をします。これまでの経験や失敗、成功、苦労などを踏まえ、子どもにはより良い選択をしてほしいと考えるのは当然のことです。こうした親の意見を子どもに伝えることが悪いとは全く思いません。ただ、伝え方には配慮も必要です。
親が一方的に「こうしなさい」「次はあれをやりなさい」と指示を出し続けると、子どもは考える過程を放棄し、「親の言う通りにすればOK」という思考パターンに陥ります。結果として、「自発的な問題解決能力」が「親への依存心」にすり替わってしまうのです。
この状態が続くと、指示がないと動けない子になり、せっかくの「自分で考えられる」という才能の芽を、親自身が摘み取ってしまうことになります。
参考文献
ロチェスター大学のデシとライアンの自己決定理論によれば、人間には「自律性」「有能感」「関係性」という3つの基本的な心理的欲求があり、親の過度な介入は自律性を阻害し、内発的動機を低下させます。Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68-78
自己決定理論と内発的動機づけ、社会的発達、および幸福感の促進. American Psychologist, 55(1), 68-78
つい口出ししたくなる衝動を抑える3つのコツ
では親が自分の考えを伝えようと思った時、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか。ありきたりではありますが、次のようなことを留意してみましょう。
- 「3秒の沈黙」ルール
子どもが何か行動しようとしているとき、言葉をかける前に必ず3秒間待ってみてください。この沈黙がお子さんに考える隙間を与えます。そして親も冷静に考えられるようになります。 - 「質問返し」の技術
子どもに意見を求められたら、「どうしたいの?」「どうしたらいいと思う?」と質問で返しましょう。答えではなく、考える機会を与えます。 - 「完成度より意思」の尊重
たとえ完璧でなくても、お子さんが自分で考えて決めた行動の結果をまずは尊重してください。子どもの考えることが完璧なはずがありません。未熟な中で自分で出した答えを、まずは認めてあげましょう。
「あなたはできる!」を自覚させる親の魔法の言葉と行動

お子さんが自分で考え、行動したことを、親がしっかりと認め、言葉にして「自分で考えることができてすごいね!」と伝えることが極めて重要です。「自分で考えられることを気づかせる」ことこそ、次の成長へのエンジンとなります。
能力そのものではなく「プロセス」を褒める具体的な方法
「すごいね」「えらいね」という褒め言葉は、結果に焦点を当てがちです。これからは、以下の具体例のように、「思考の過程」を褒めてください。
- 「諦めずに色々な方法を試したね。その粘り強さがすごいよ。」
- 「途中で『ああしよう』と自分で切り替えたところが、一番賢い行動だったよ。」
- 「先に準備をしておいたから、スムーズにできたね。素晴らしい判断力だ!」
このように、何がよかったのかを具体的に伝えてあげましょう。
考える子どもへ私(執筆者)が塾で実践した「気づきの声かけ」
- 子どもは「自分で考えられていることや、それがすごいことだとは気づいていない
- 考える力を「習慣」にし、将来へつなげるために、親がとるべき3つのルーティン
- おわりに 親がすべきこと。それは「あなたは自分で考えることができていて、それはすごいことなんだ」と気づかせてあげること

子どもは自分で考えられていることや、それがすごいことだとは気づいていない
わたしの塾にもきちんと自分で考えられるお子さんはたくさんいます。そのすべての子に言えるのが、自分の力を分かっていない、ということです。その子の中では自分の行動は当たり前で、そういうものだと思っているからです。
そういうお子さんは、その日の学習を終えるのに時間がかかることもあります。ここで心配して安易に声をかけることはしません。
間違えてもいいので、ひとまずその子の考えた解答を出してもらいます。声掛けはここから。「自分の解答を消さずに、どこが違うのかまず考えてごらん。」これで正しい答えが出ればもちろんOK。さらに間違えた場合、その子の解答をよく見てミスしている箇所を指摘してあげます。ほとんどの生徒さんはこの時点で正しい解答を導くことができます。
それでも正解できなかった場合は、「もう一度自分で考える?先生と一緒に考える?」と助け船を出します。自分で考えられる子は頑張りすぎることもあるので、頃合いを見てフォローすることも必要です。
一緒に考える時も、「ここまでは分かっているんだね。じゃあ次はこの公式を使ってみようか。」とその子の出番を必ず作るようにします。一方的にわたしが説明することはありません。
そして必ず伝えているのが「まずは自分で考えて取り組むところが本当にすごいよ!」ということです。彼らの中で当たり前のその行動は、実はすごいことなんだと、周りが認めてほめてあげることがとても重要です。
「あなたの力を認めています」というメッセージを伝えることで、その子はさらに自信をもって意欲的に取り組むようになります。また、分からない時の対処法も身に着けていきます。
「ここまでは分かるけれどこの次をこの方法でやっても正解になりません。」と、自分のやったことを客観的に分析し、アドバイスを求める、という行動へシフトアップします。「質問はダメ」という考えを抜け出し、さらに伸びるための方法として位置づけられるようになります。
参考文献
ジマーマンの自己調整学習理論では、メタ認知(自己認識)があることで、学習プロセスにおいて修正行動の必要性を特定できることが示されています。
Zimmerman, B. J. (2000). Self-regulated learning and academic achievement. Educational Psychologist
ジマーマン, B. J. (2000). 自己調整学習と学業達成. 教育心理学
考える力を「習慣」にし、将来へつなげるために、親がとるべき3つのルーティン

自分で考える力は、特別な訓練ではなく、日々の習慣から生まれます。以下のルーティンを取り入れ、「できる子」を「さらに伸びる子」へと進化させましょう。
【習慣1】失敗を「次の選択肢」と捉えるマインドセット
失敗は、「試したけれどうまくいかなかった一つの選択肢」に過ぎません。失敗したときこそ「この方法がダメだと分かったね。じゃあ、次は何を試す?」と問いかけ、お子さんが失敗を恐れず、常に複数の選択肢を模索する習慣を身につけさせてください。失敗したから自分はダメなんだ、という考えにならないよう、チャレンジを認めて次の行動へ移れるようにサポートしてあげましょう。
【習慣2】自分で決めたことには責任を持つ小さな訓練
今日の洋服選び、宿題の順番、週末の予定など、日常の小さなことからお子さんに「決定権」を与えましょう。そして、その結果がどうなろうと、親は口出しせず見守ります。自分で決めた結果を受け入れる訓練が、将来の大きな決断への自信につながります。
実際は「この方がいいよ。」と声をかけたくてたまらないと思います。でもここで「失敗してもかまわない。」と親が受け入れる姿勢が必要です。小さなことから習慣づけていければ、失敗も小さいうちに学んでいけますね。
【習慣3】 ”できること”を子どもに気づかせてあげること
子どもは自分がどんな力を持っているのか、自分ではなかなかわかりません。それを言葉にして、親が認めてあげること、褒めてあげることがとても重要です。
特に「自分で考えて行動できた時」は存分に褒めてあげましょう。
それは子どもにとって大きな自信になり、自己肯定感を大いにあげてくれます。
【おわりに】 親がすべきこと。それは「あなたは自分で考えることができていて、それはすごいことなんだ」と気づかせてあげること

この記事の要点は以下のようになります。
●自分で考える力がある子は「困った」を言わず、自分で解決策を探しています。
●親の良かれと思った口出しは、子どもの自立心を奪う最大の敵です。
●「あなたはできる」と能力を自覚させるには、結果ではなく「思考のプロセス」を褒めましょう。
この記事を通して、「できる子」を持つ親御さんこそ、その才能を信じ、そっと見守り、「あなたは自分で考えてやれる子だ」ということを、言葉で気づかせてあげることが重要である、ということをご理解いただけたかと思います。
親の最大の役割は、子どもの能力を引き出す「照明係」になることです。
今日からぜひ、お子さんが自分で考え、行動したことに対し、「すごいね!それって自分で考えてやったの?さすがだね!」という言葉を伝えてみてください。この一言が、お子さんの持つ「自分で考えることができる」という偉大な能力を再認識させ、将来の自信へとつながる確かな一歩になります。
さあ、今日から「できること」を気づかせることのできる親として、お子さんの成長をサポートしていきましょう。
つつじ屋子ども向けの塾を15年ほど運営しています。
塾の経験を元に記事を書いてみました!



塾をがんばって下さい。
私はもう定年なので…。
うちの三男、グレーゾーンボーイです。>>>
私は地方在住の50代の主婦。子どもの教育に関わる仕事を週2回ペースでしている”つつじ屋”といいます。
家族:だんな 定年間近の会社員
長男 大学生 勉強が大好き
次男 大学生 自由が大好き
三男 高校生 ウルトラマン大好き
三男は発達障害グレーゾーンで境界知能の持ち主です。
このブログでは、この三男にまつわるエピソードや困り事を、グチ多めでつづっていきたいと思っています。よろしくお願いします。
お子さんに本をたくさん読んでもらいたいと思っている親御さんに、絵本定期購読もおすすめです 〉〉
↓こちらはグレーゾーンの子どもに向けて書いた読書感想文と詩の一覧です。
↓こちらは子どもに向けて書いた夏休みの読書感想文です。
出典 文部科学省 これからの時代に求められる国語力について










